ー旅の始まり
あれは、ギリシャの小さな島を訪れたときのこと。 観光地としてはあまり知られていないその島は、街も静かで、レストランも数えるほど。
Googleマップにはビーチの名前がいくつか出ていたけれど、どこも少し遠く、どうしようかと迷っていたとき、宿のオーナーである年配のご夫婦が「観光客はあまり行かないけれど、いい場所があるよ」と教えてくれたのです。
「舗装はされていないから歩きにくいかもしれない。でも、誰もいないし、波の音だけだよ。」 オーナーのその言葉に、私はすぐに惹かれました。
JORNAL
#絶景
2025.05.07
あれは、ギリシャの小さな島を訪れたときのこと。 観光地としてはあまり知られていないその島は、街も静かで、レストランも数えるほど。
Googleマップにはビーチの名前がいくつか出ていたけれど、どこも少し遠く、どうしようかと迷っていたとき、宿のオーナーである年配のご夫婦が「観光客はあまり行かないけれど、いい場所があるよ」と教えてくれたのです。
「舗装はされていないから歩きにくいかもしれない。でも、誰もいないし、波の音だけだよ。」 オーナーのその言葉に、私はすぐに惹かれました。
翌朝、小さなパンを紙袋に入れてもらい、水のボトルを片手に、オーナーが描いてくれた手書きの地図を頼りに歩き出しました。
観光客向けの道ではなく、地元の人しか知らないような細い坂道。
すれ違うのは犬を散歩させるおばあさんくらいで、途中、ヤギが何頭も岩の上からこちらを見下ろしていたのを今でも覚えています
しばらく歩いて、視界がぱっと開けた先に、それはありました。名前も、看板もない小さな入り江。 海は透明すぎて、足元の石の形までくっきり見えました。 砂浜というよりは、小石混じりの静かな岸辺。
だれもいない。音がしない。波のさざめきと、風の音だけ。 私はしばらく、なにも考えずにその場に座りました。 スマホを出して写真を撮る気にもならず、ただ海を見つめていました。
旅に出る前は、何か特別なことがしたいと思っていたけれど、この「何もない時間」こそが、旅のなかでいちばん贅沢なものなのだと、そのとき初めて気づいたのです。
その後、島に滞在していた間、何度かそのビーチを訪れました。誰かに会ったことは、一度もありません。でも、それがよかった。
私の中では、あの場所は「島がこっそり見せてくれた秘密」のような感覚で、今でもときどき、ふと目を閉じるとあの静けさがよみがえってきます。
旅先で誰かに親切にしてもらったこと。観光地ではない、けれど大切に守られている場所を教えてもらったこと。スマホに残っていないのに、心に強く残っている景色。そんな旅の記憶が、VOYAGEにはある気がします。
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